日焼けな瑞鶴で「Wiggle Wiggle」

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  • 投稿日:2020/9/29
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「愛のままにわがままに僕は今日だけはやる気でない」薄墨を塗ったような淡い空に、一層薄い雲が靡いている。錠もされず、行き違いの窓。そのもどかしい隙間から吹き込む風が妙に冷たく湿っぽい。頬を撫ぜる気配はいわゆる夜の帳と謂う他なく、雨上がりの所為だろうか、土の臭いとも森の薫りとも称するべき原始の臭気が微かに混じっているようにも思える。「あぁ、もう秋なんだな」僕は軋む背凭れから身を起こして、漠然とそんなことを呟いた。照明のない、ディスプレイのバックライトだけに照らされた薄暗い部屋。その一面を見遣れば、七月から捲られていないカレンダーがだらしなくぶら下がっている。僕の時間はそこで止まっていた。振り返って思う。夏というのはとても不思議な季節だ。暑くて、じめじめして、ぎらつく太陽が鬱陶しい。そんな風に貶していても、いざ夜風が涼しくなって、鈴虫が鳴き出す季節になると「あぁ、もう夏も終わったんだなぁ」とあの酷く澄んだ青空が懐かしく感ぜられる。あるいは僕は、あの夏の情景に、恋焦がれているのかもしれない。そんならしくもない考えが脳裏を巡って、「まさかな」と僕はかぶりを振った。盗み見るように、もう一度、ちらとカレンダーを見る。そこには、海辺で羽を伸ばす四人の少女の姿が描かれていた。白いフレア・ビキニに身を包んだ少女。ビキニにホットパンツを合わせた少女。あどけない姿をスクール水着に包んだ少女。艶やかな黒いパレオで着飾った少女。仲睦まじく海辺で燥ぐワンシーンはあまりに鮮烈で、どこまでも夏だった。括れた腰とその延長線上で美的な曲線を描く脚。濡れた髪が項にへばり付き、塩っぽい雫が伝い落ちるや、立派な胸部装甲で塞き止められる。それは山々に降った雨が川となって岩肌を削り取り、長き時に亘って豊かな渓谷を形成するに至る――超自然的な美と同義であった。果たして人は"これ"を嫌いになれるであろうか?いやなれない。なれるはずがない。正直ぺろぺろしたい。父たる大地に立ち、母なる海に与えられてきた人が、揺り籠たる地球を愛する。それと同じように、愚なる息子が立ち、#### 性なる母《ママ》にビュンビュン迸る――ミ・ヤ・ビなSPLASH!するのはもはや当然の帰結であり、種の保存本能に捕らわれた哀れな雄の本質だ。何を言っているんだ僕は。謎の深夜テンションで思考の終着点がわからなくなった僕は、窓を閉め切ってから徐にPCを起動した。なぜかわからない。けど今なら、どんな作品でも作れそうな気がしたんだ。根拠のない自信に突き動かされ、MMDを起動する。作りかけだった動画を完成させてやろうと意気込む僕の目に飛び込んできたのは、見覚えのないエラーメッセージだった。妙な胸騒ぎを覚えつつ再起動を繰り返すも、やはり同じメッセージを吐き出す。まさかと思い一つ前の作業データを読み出してみれば、そちらは普通に起動することができた。どうやら最新のデータが破損しているらしい。絶望――ちょうどそれに似た気持ちで、えたいの知れない想いが湧いて来る。「ああかかる日のかかるひととき」「ああかかる日のかかるひととき」いつ用意したとも知れないそんな言葉が、ひらひらとひらめいた。――僕はMMDのX印を連打クリックしてウインドウを閉じると、そのままWindowsアイコンへとカーソルを滑らせ、PCをシャットダウン。流れるような動きで寝室のベッドに横になると、ほうっと息を吐いてから瞼を閉じた。「明日から本気出す」当然、翌日もやる気は出なかった。高画質&差分とかFantia : / : /